ある新しい国のお話

昔々、いろいろな国から追い出された人々が集まって、
自由と平等をモットーに掲げた新しい国を作りました。
そのころ他の国では、現在の王様の血縁者しか
次の王様にはなれないという決まりがありましたが、
その国では国民全員が選んだ人間が王様になるのでした。
その国は美しく豊かな大地を持っていましたし、
皆が国をもっとよくしようと、一生懸命に働きましたので、
たちまち世界で一番強く裕福な国となりました。
その国の人々は、自分たちの作った新しい国を、
たいへんすばらしい国だと、心から愛していました。
月日は流れ、何度も何度も王様がかわりましたが、
その国のモットーはかわりませんでした。
今度の王様も、自分の国とその国民が大好きでした。
「自由と平等を愛するこの国は、なんと素晴らしいのだろう。
我が国の思想も国民も、世界中で一番優れている」
王様はそう思って世界中を見渡すと、
自分の国と異なる思想を持つ国が、
いかに多いかということに気がつきました。
「なんと嘆かわしいことだ。
早速、各国へ我が国の正しい思想を伝えて、
正しい方向へ導いてやらなくては」
そう考えた王様は、早速軍隊を集め、命令を下しました。
「まわりの国々に、正しいものはなにかを教えてやるように」
まわりの国々は、今まで信じてきた考え方や
培ってきた文化や生活を変えたくないと思いました。
ですが、相手は世界で一番強くて裕福な国です。
その国に逆らえば、どうなるか分かりません。
結果、ほとんどの国がおとなしく従いました。
王様に逆らったいくつかの国の王様たちは
その王様に従う、新しい王様に取り替えられてしまいました。
このように王様が正しい思想を世界に広める使命の遂行中に
ある若者が、王様にこう申し上げました。
「王様、恐れながら申し上げます。
自分と異なる考え方を認める事こそが、
真に自由と平等を愛する事ではないでしょうか?」
これを聞いて王様は怒りました。
「ええい、なにを言うか。
お前の考え方は、全く間違っているぞ」
王様はその男を人民を惑わすものだとして
縛り首にするように命じました。
また別の男が王様のところにやってきて、
今度はこう申し上げました。
「王様の考え方は本当に素晴らしい。
他国のものも、正しいものを教えていただいて
王様には感謝を示さねばなりませんな」
王様はそれを聞いて、たいそうお喜びになりました。
「わははは。
お前は物事の正しい姿をよく分かっておる。
お前を今日から大臣にするぞ。
一緒に正しい道を作っていこう」
王様はこのように自分と同じ意見の人間のみを愛し、
それ以外の人間はよくないものと考えてしまうのでした。
こうしてその国の人間は、だんだんと自分の考えや
自分が本当に思うことを外に出さないようになりました。
そして王様の言うように、「この国が一番優れている」と
言い続けた人々は次第に、自分たちは選ばれた人間で
他の国の人間は、そのように優れた人間である自分たちより
劣った人間だ、と思い込むようになりました。
「俺たちは世界で一番優れた国の国民だぞ。
お前らの国の間違ったやり方を指導してやったんだから、
俺たちにお礼をしなくちゃならないぞ」
そうして、その国の人々は他の国の人間から
いろいろなものを奪ってしまいました。
それでも、特にひどい事をしているとは思いません。
だって、自由と平等を愛する自分たちこそが
この世界で最も優れた存在なのですから、
他から敬われるのは、当然の事でしょう。
そうこうしていくうちに、その国はまわりの国から孤立してしまい、
その国の国民も、自分の国を本当に愛する気持ちを失っていきました。
強く裕福だった国は今や荒れてしまい、見る影もありません。
王様はため息をついてこういいました。
「ああ、あんなに素晴らしい国だったのに
どこからこうなってしまったんだろう。
自分の使命の達成に向けて、こんなに努力した私を
神様は見ていてくださらなかったのだろうか」
さて、ちょうどその頃、王様の国からずっと遠くはなれた海の上に
たくさんの人々を乗せた船が新しい大地を求めて旅をしていました。
この人々は、自分たちの祖先の様に、新しい国を作ろうと
王様の国から逃げ出してきた人々なのでした。
その中には、王様に縛り首の刑に処された、あの若者の姿も見えます。
きっと、この若者が死刑になるのはおかしいと感じた人々に、
こっそりと逃がしてもらったのでしょうね。
さて、今度はどんな国になるのでしょうか?
それはすべて、新しく国を作る人々次第なのです。
あの国の王様も、あの国の結末も、
結局は、国に住む皆が生み出したものだったのですから。








